「×××」

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幸い、私は「×××」に殺されませんでした。 何故ならば、私には温かい人達が居たからです。 「×××」というオブラートに包まれた私のことを見捨てずに、 彼らは少しずつ溶かしてくれたのです。 「×××」に触れるという事への恐ろしい気持ちよりも、 それでも私を助けようという気持ちを優先したのです。 きっとそれなりのダメージを受けただろうに、私のそばに居てくれたのです。 彼らのおかげで、私はまた希望や幸せを 虚無だった心に入れてゆく事が出来たのです。 そして漆黒に近づいていた私の心の黒色は、徐々に灰色へと薄くなっていったのです。 それでもなお、「×××」は私に触れるのを止めません。 折角入れておいた希望や幸せを、盗んでゆきます。 まるで何度濯いでも取れない、魚の血に苛立つように、 「×××」は私から生まれ続ける希望や幸せを嫌がりました。 そして私が新しい一歩を踏み出そうとすると、 「×××」は私の耳元で黒い言葉を囁くのです。 けれども私は、もう「×××」から逃げないことを決めたのです。 何故ならば、私は気づいたからです。 「×××」がついているからこそ、生きることが美しいということを。 「×××」がいなければ、こんな気持ちになることもなく、 幸せや希望に包まれながら生きてゆくことが出来るでしょう。 ですがそれだと、この気持ちを乗り越えた時の気持ちは、 知ることは出来ないのです。 なので私は、「×××」の手と思われるところを握りしめ、 これからの長い人生を歩き出すのです。 すると「×××」は私の手を握り返し、微笑んだ気がしました。
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