私の「ワタシ」

両者の意見

【片方の意見】
私はどうしたらいいの？
私の顔に貼り付いている、仮面が取れないの。
取り方が分からないの。
取り方を教えてもらおうと周りを見渡すと、
みんな仮面をつけて話しているの。
表面上だけの会話を楽しんでいる。
皮が動いている、笑っている。
けれども中の者は笑っていない。
そもそも仮面って何？

私はどうしたらいいの？
私には、みんなが言う霊感なんてものは無いの。
霊感だと思っていたものは、いつしか幻覚だと私は気づく。
私を騙したのね。
時に見えるものは、私の頭の中。
時に追いかけてくるものは、私自身。
結局私は、支配されている。
ガムのように粘っこいそれは、一体何？
そしてあなたは誰？

今日も仮面は私の顔を覆う。
そこに一筋の涙が滴り落ちる。
仮面のラベルには、こう書いてある。
「人間　わたし」
ああ、私はうずくまる。

【もう片方の意見】
ワタシはどうしたらいいのかしら？
この汚い私から出られない。
私は表面上は人間なの。けれども中を、ほら覗き込んで。
…空っぽでしょう？
このブヨブヨとした、ブカブカの皮の中に
ワタシはいるのよ。
ワタシって何て不幸なのかしら。
けれども同時に、ワタシって幸せだと思わない？

ワタシはどうしたらいいのかしら？
私のことがとても嫌いだわ。憎くて憎くてたまらない。
ワタシは私を殺したい。
でもそうしたら、ワタシも死んでしまう。
二人なのに一人なのね。
さあこの体、誰のもの？
ワタシとあなたで殺し合いでもする？
でもそれは不可能ね。
だってワタシ達はひとりなんでしょう？

今日も私はワタシを閉じ込める。
そして私は、それに拳を叩きつける。
けれどもそれは、ひびさえ入らない。
それのラベルには、こう書いてある。
「幻覚　わたし」
ああ、ワタシはうずくまる。