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「・・・それはちょっと失敗だったかなー。」
女性は少し顔を赤らめながらうつむく。
「仕方ない・・。金払うよ。そんな大切な靴。いくら?」
「3万5千円」
「あんたはどうやら嘘をついていないようだし。弁償する価値はありそうだ。」
「ありがとう。」
気安いポーズで男性からお金を受け取る女性。このままこのやり取りは終わるかと思ったが、その時、とてつもなく熱い熱風が、この路地裏まで入り込んで来る。
「な、なに?」
女性が口を押える。濃い煙が立ち込める。
「こっちだ。」
男性が女性の手をとって、路地の、熱風が注ぎ込んで来た側とは反対側の道に向かった。女性は踵を失ったヒールの片方を、びっこをひきながら走る。
「なんなの?これ」
路地裏を走り切って後ろを振り返ると、路地とつながった国道が火の海になっている。遠くから消防車の音が聞こえてくる。
「火事・・かな。」
「火事にしては酷くない?」
「たしかにな・・。」
「あれ何?」
空を指差す女性。
遠くに数十機の戦闘機が旋回する姿が見えた。
「戦争・・?」
遠くから沢山の悲鳴が聞こえる。
『けが人がいるぞー!けが人がいるぞー!』
大声で叫ぶ声。後ろから数人の警察官が燃え盛る炎の方に向かって、消化器片手に向かって行く。遠くで車同士がぶつかる音。
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