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「ねぇ、何があったの?」
女性が走り去ろうとする警察官の肘のあたりをつかんで呼び止める。
「米軍の攻撃が始まりました。ここは危険です。ここは自衛隊の・・そのあまり大きい声では言えないんですが、基地がありまして。そこを爆破されました。けが人と死者多数です。つまり・・地下にまで貫通する爆弾を・・・ おっとしゃべりすぎました。急ぎますんで。」
女性の手を軽く払いのけるようなしぐさをしながらも、礼儀正しく敬礼し、警官は消化器を片手に立ち去った。
果たして、あの燃え盛る炎に、あの消化器でどれくらいの効果が期待できるものか。あまりものアンバランスさに、違和感があった。
「どうする?」
女性が男性に問う。
「とりあえず、ここを離れよう。」
「そうね。」
「あそこの駐輪場に俺のバイク・・スクーターだけどね。止めてある。二人乗りは本当はだめだけど・・・。一緒に乗せてあげるよ。」
「ありがとう!」
混乱しながら走り去る人達や、泣き叫ぶように誰かの名前を呼んでいる人達の姿があった。良くわからない言葉をうわごとのように発しながら、ぎょろぎょろとした目でにらみつけてくる男性の姿があった。
みんなおかしくなった。
男性は女性をスクーターに乗せる。
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