【事の始まり】

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 その言葉を聞いた瞬間、私の中では「はぁ?」という疑問しか浮かばなかった。  だってそうだろう、いきなりこんな言葉を言われても『何故?』としか思わないだろう?  それが立場上、『嘘をついてはいけない』という役職に就いている“お偉いさん”であればなおさらだ。  理解ができない、意味不明なその発言により頭が混乱している私達を放っておいて、その人はその理由を語り始めた。 『先ほどNASAによる観測により、この地球に巨大な隕石が凄まじい速度で向かっているとの情報がありました。その速度と大きさを考えると、我々がいるこの“地球”はその衝撃で半分ほどえぐり取られるとのことです。早い話、我々は何の抵抗もできずに、ただ滅びるしかできない状況に陥ったのです。もう……逃げることも、立ち向かうことさえ……なにも、なにもできない……と言うことです……』  語る間に零した涙をぬぐいながらも、だがその理由を説明し終えたその人に、テレビ局の関係者だろうか、そのような人物がある問いをぶつけた。 『何故もっと早くその情報を言わなかったのですか?』――と。
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