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月子とヨル
「ただいま、ヨル。」
私がソファで寛いでいると玄関から、月子の声がした。私は立ち上がって、月子を出迎えに向かった。
近づいて彼女を労うと、疲れた顔をほころばせて喜んでくれる。
「今日も残業で遅くなっちゃった。すぐに晩ごはんの準備しないとね。」
私の視線に気づいたように、月子は目を伏せた。
「そうだよ、また課長。いつも自分が帰るときに私に頼むんだよー嫌になるー」
月子は商社というところで働いている。朝は早く、帰るのは遅い。最近は職場の上司によく仕事を頼まれているらしく、より一層帰るのが遅い。
私は、月子のことが好きだ。月子の笑顔も、優しく私に触れてくれる温かい手も。何もしなくても一緒にいられれば幸せなのだ。本当は1日中、月子と一緒にいたいが、それはできない。
私は月子と違って人間ではないから。
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