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そう言って、後ろの「僕」は静かに泣く。袖で顔を覆い、頬を濡らすのだ。
今ならわかる。あの扉は何があろうと決して開けてはならなかったのだ。
目の前の「僕」が小さく何かを呟く。
けれども薄れゆく意識の中で、その言葉を聞き取ることは出来なかった。
決して開けてはならない扉があった。
長い、長い時をかけ”私”は「僕」を待つ。
開けた扉の先にある、絶望と哀しみを繰り返さない為に、番人として扉の前に立った。
メビウスという言葉を知っているだろうか。あるいは輪廻という言葉の方が理解されやすいかもしれない。
人は繰り返すのだ。同じ生を、同じ過ちを。
それを途切らすことは、己でしか出来ない。
だから”私”は「僕」を待つ。
今度こそ、すべてを終わらす為に。
ひたひたとここへ近づく足音が聞こえてくる。扉の前で「僕」は足を止めた。
あの時と同じ、扉の向こうの”私”の声に惹かれているのだろう。
そっと手が伸ばされる。その後背にゆっくりと近づき、”私”は「僕」の手を制止する。
”駄目だよ”
どうか断ち切ってほしい。この永く続く苦しみの中から。
今度こそ、”私”を タスケテ ほしい。
(endless)
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