第10章 シュプレームのオバチャン

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第10章 シュプレームのオバチャン

合宿教習所の食事は、朝食以外は教習所内の食堂で摂ることになる。夕方の食事は定食と決まっているが、昼食は定食以外にも麺類などがあり、日々のメニューはバラエティに富んでいる。 食堂内の食券機に、入校時に支給されたカードを入れて食券を購入する。 調理場には優しいオバチャンたちの溢れる笑顔。 夕食の予約は、所定の用紙に時間帯の記してある欄に自分の氏名を記入する。教習スケジュールと照らし合わせ、自分の空いている時間帯に氏名を記入することになる。 夕食の時間帯は17時から18時30分まで。 教習の合間をぬっての食事となるが、そのような煩雑なシステムも食事の予約表の書き方も、分からないことは全て調理場のオバチャンが親切かつ丁寧に教えてくれる。 このように南湖自動車学校では、完璧な教習以外にも、教習生に対する温かな家庭的な環境をも兼ね備えており、全ての面に関して安心感を与えてくれるのだ。 教習生が不安だらけの初めての合宿教習所で、安心して、のびのびと教習に取り組むことが出来る背景には、そうした教習所側の教習生に対する配慮が行き届いている証である。それも意識してではない。自然体なのである。 意識して相手に接するということは、日常生活においても仕事をする上においても非常に大切である。しかし、過剰な意識はある意味自然体ではないとも言える。 人間は感情を持った生き物である。 (ああ、この人は私に対してとても気を使ってくれてるなぁ) と敏感に感じ取ることができる。 意識して他人を慮ること。それは確かに大切なことだが、その意識がかえって仇となり、ぎこちなくなったり、反対に気を使わせてしまう事もある。
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