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第2章 兄弟の話し
平成27年10月10日、株式会社スター交通の面接を受けるため千葉市内のタクシー会社を訪れた。
平成25年4月、私は私は2回目の服役を終え、すぐに教習所に通い普通車免許証を取得した。教習所に通うのは自動二輪を含め実に4回目だった。
3度目普通車免許証を取得するために教習所を訪れた時は、流石に教官も驚きの表情を隠せなかった。
「何でこんなに免許をなくすんだね…」
「1回取り消しになるのは分かるが、3回も4回も教習所に来る人は初めてだな…」
と、毎回実技になるとあらゆる教官から言われていた。
「やはり、運転はうまいな…何回も教習所に通っているだけのことはある…」
あるベテラン教官はそう呟いた。
私はこと運転に関しては自信があった。
親分や兄ィの運転手をしている時は、
『常に安全運転を心掛け、スピードを出すときは疾風のごとく爆走して、時間通りに目的地に辿り着くメリハリのある運転』
を徹底的に叩き込まれた。
しかし、一発試験で幕張の免許センターに行く自信はなかった。
何回も落とされて毎回試験場に行くくらいなら、教習所に通ったほうが確実だったからだ。
3回目の普通車免許証を取得してすぐだった。
久しぶりに堅気になった兄弟と食事に出かけ近況を報告しあった。
「ところで兄弟、いま、何やってんだ?」
「タクシーさ。兄弟もうちに来いよ」
「はっ?タクシー…」
「何でタクシーなんて乗ってんの?タクシーなんかじゃ食えんでしょ」
この兄弟は数名いる兄弟分の中でも一番気性が荒かった。あの暴れん坊が客に頭を下げる姿なんてまったく想像できなかった。
こいつと初めて会ったのは千葉拘置所だった。2ヶ月くらい一緒に過ごしたが、その後はそれぞれ別の少年刑務所。出所後は別の組織に入ったが20数年来の長い付き合いである。
「タクシーはな、やりようによっては稼げんだよ」
兄弟がタクシー事情を話始める。
「俺は、夜だけやってんだよ。昼間なんてやるもんじゃねえ。公共の乗り物が動いてるしな」
私は兄弟の話に徐々に引き込まれていった。
「俺は飲み屋街でタクシーやってるけど、風俗やギャバ孃を何人も固定客に持っている。彼女たちは以外と地元じゃなく、他所の市から通っているのが多いからな。かなり稼げんだよ。軽く40万はいくな」
「40万…タクシーでか…」
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