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第15章 オジサンの会話
10月半ばとはいえ、白河市の日中の気温は連日20度を超え、まるで夏を思わせるような暑さだった。
特に教習車のハンドルは重く、切り返しの多い教習所内での技能教習を終えた若者の殆どが、
「マジ、車内の中地獄…ハンドル重いし、その度に汗だく…」
を連発していた。
それだけ朝晩と日中の気温差が激しく、風邪をひき始める生徒もいた。
そんな最中、私の路上教習も回を重ね一通りの検定コース走った。
路上教習は全部で13時間。その内の4時間がシュミレーション教習である。だから都合9時間しか路上に出ることが出来ない。日に換算して3日である。この短い時間で3通りある検定コースを全て把握し、尚且つ要所要所、つまり、どの位置で切り返しを行われるのか、どの地点からスピードを緩め、お客さんを乗車させるポイントにつけるのか云々をマスターしなければならない。
(因みに余談ではあるが、これは検定には含まれないが、S字やクランクをバック走行したり、坂道をサイドブレーキなしでアクセルとブレーキの調整のみで発進させたりといった教習も行われた)
また、あるコースには、畑の真ん中の十字路に4ヶ所全部が赤の点滅信号機がある。
赤の点滅信号は、いわゆる一時停止の意味であるが、タイミングを見計らってスムーズに発進しないと、
「何やってんだぁ、オメエ、後ろつかえてるべ。はやく、出れっ」
と鈴木教官の叱責を受ける。
その畑の真ん中の細い道は交通量が多く、
(こんな所が検定コースだったら、たまらないな…)
と、いつも思っていた。
畑の道を抜け大通りに出て教習所へと帰る。
教習所への帰路、大手パチンコ店の前を通るが、そのパチンコ店を通る度に、教習所の近くのセブンイレブンでの見知らぬオジサンたちの会話を思い出した。
「最近、何処そこのパチンコ店はまったく出ねえなぁ」
「ああ、海なんかサッパリだぁ。そういや○○最近顔出さねえけど、どうしたんだべ」
「やられてんだべ。だってよ、海なんて、ハマって、ハマって、ハマったあとに出るべよ。あれじゃ客がいなくなるべ…」
「まあな」
私は、セブンイレブンが地元住民の憩いの場と化していることに、何かほのぼのとした気分になった。
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