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第16章 自動車教習所で学ぶこと
南湖自動車学校で卒業検定に合格し、それぞれの地元に帰ってゆく教習生を見ていると、何か、学び舎に別れを告げる卒業生のように思えてならなかった。
在校期間は僅かなものである。しかし、若者たちにとって運転免許証を取得するということは、ある意味、社会人第一歩を歩み出すことでもある。
免許証を取得する為には、数十時間の学科教習と技能教習を受けなければならない。時間と決して安くはないお金がかかる上に、諸検定に合格しなければ次の段階に進むことが出来ないし教習所を卒業出来ないのである。更に言うと、教習期間、学科試験の期間まで厳格に定められている。
その最終段階が免許センターにおける学科試験である。その学科試験に合格して初めて運転免許証を手にできる。
皆さんもご経験があると思うが、合格発表前のドキドキ感、自分の受験番号が電光掲示板に出て学科試験に合格した瞬間。
そして運転免許証を手にした瞬間、
(やった!)
と、思ったのでは。
それまでに至る努力は、大袈裟かもしれないが、高校入試や大学入試に匹敵するのではないか。
私にはそう思えてならない。
運転免許証を取得することにより、憧れの車を運転することが出来る。しかし同時に、
『危険』
というものが常に伴うことになる。
危険を伴うということは、安全を意識して運転することになる。
つまり、自動車教習所に通い免許証を取得することによって、
『人命の尊さ』
が、今まで以上に深く意識できる大人になるのである。
その、人命の尊さと安全運転技術を同時に最初に学ぶ場所が、
『自動車教習所』
である。
看護学生や医学生ではない、医学とは全く関係のない若者たちが、唯一、人命の尊さを学べる場所が自動車教習所ではないか。
これは、
1+1= 2
のような単純なことではない。
単純なことのように思う者は、いつか重大な事故を起こす。
そして、事故を起こした後に思うのである。
(教習所で学んだことを、もっと意識すべきだった…)
と。
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