第17章 アメとムチ

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第17章 アメとムチ

10月25日、卒業検定の日を迎えた。 検定官は塩田教官。検定コースは第3コースに決まった。 第3コースは、私の苦手とする 『4ヶ所すべてが赤の点滅信号機』 は含まれておらず、私にとって比較的楽に思えるコースでもあった。 検定日当日は、あまりの緊張感から吐き気を催すほどだったが、諸教官の励ましと容姿端麗な事務員たちの、 「頑張って下さいね」 の一言により私の気持ちは昂った。 しかし、如何せん受験番号が『4』であることに、験を担ぐ私にとっては 、 『縁起の悪い数字』 に思えてならなかった。出来ることなら、 『7』 もう少し贅沢をいえば 『777』 が良いところだ。 その縁起の悪い受験番号を食堂のオバチャンに嘆き伝えると、 「あら、何言ってるのっ。あのね、4 って数字は幸せの 4 なのよ。だから、きっと合格よっ!」 との、思いもよらぬ激励に感銘を受けたのだった。 その反面、これはあとの話になるが、私は卒業検定で、緊張のあまりか3回もエンストしてしまった。検定終了後に、よく会話を交わしていた鈴木教官から、 「どうだった?うまく出来たか?」 と、声をかけられた。 私は、 「いやぁ、3回もエンストこいちゃいました」 と、うなだれて返事を返した。 鈴木教官はとどめを刺すかの如く、 「なにっ、オメエ、3回もエンストしたの?ダメだっペ、今回は諦めれっ」 「ははは…ですね…」 私はこの時、 『アメとムチ』 という言葉が頭の中を駆け巡った。
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