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第19章 素晴らしき達成感
教習車に乗り込む。
ナンバープレートの斜め右上には、
『検定中』
のプレート。
シートベルトを締め、ミラーを調整する。
そのひとつひとつの動作を、慎重かつ丁寧に行っていった。
「はい、エンジンをかけて車を出してください」
塩田検定官が口を開く。
教習車をスタート地点から出し、教習所内のコースに入った瞬間、
ガタッ!
っと、エンストしてしまった。
慌ててエンジンをかける。
塩田検定官が検定簿に何やら記入し始めながら、
「はい、ではそのまま公道に出てください」
と言った。
私の喉はカラカラに渇き、いきなりエンストをしてしまったせいか、緊張感はマックスに達した。
公道に出る前に、一時停止して安全確認。
クラッチを繋いでアクセルを徐々に踏み込む。
ガタッ!
またエンスト。
慌ててエンジンをかける。
キュルキュル
エンジンをかける音だけが静かな車内に響いた。
慎重にクラッチを繋ぐ…
(焦ってはいけない…慌ててはダメだ…慎重に、慎重に…)
しかし、私に取り憑いたエンストという悪魔は、エクソシストでもない限り、もはや取り除くことが出来ない段階まで来ているような気がした。
ガタッ!!
エンストという悪魔がエクソシストを打ち負かしたように私の心の中で笑っているような気がした。
公道に出るまでに、3回もエンストしてしまった私…
塩田検定官のペンを走らせる音だけが鼓膜に響く。
「慌てないで落ち着いてやりなさい」
「はい…」
やっとの思いで、教習車を公道に出すことに成功し、県道に入って白河市の中心部へと向かった。
しばらく走ると、私の緊張感もだいぶほぐれ、普段通りに運転することが出来た。もはや、私の心の中のエンスト悪魔は消え去った。
ショッピングモールを抜け、畑の真ん中の道を走り交差点を右折するためにウインカーを出して後続車に合図をする。
前方の信号が赤から青に変わる。
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