第5章 運転免許経歴書

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第5章 運転免許経歴書

合宿教習所代金を振り込んだ私は、その足で本籍地記載の住民票を取りに千葉駅前の区役所の出張所に赴いた。住民票を取った私は急いで千葉駅構内の『立ち食いそば』で空腹を満たし、総武線各駅停車に揺られ免許センターに程近い、 『幕張本郷駅』 に降り立った。 しかし、電車で免許センターに行ったことのない私は、どこの乗り場からバスに乗ったらよいのか分からず、お上りさんみたいにキョロキョロとバス乗り場を探したが面倒くさくなり、 「あのう、免許センターに行きたいんですが、どこで乗るんですか?」 と、近くを通りかかったお婆さんに尋ねた。 お婆さんは、 「免許センターかい?ああ、あそこだよ。ほら、①って数字が書いてあるだろ。わかるかい」 と、親切に教えてくれた。 「なんだい、兄さんはこれから試験かい?試験は難しいからね。頑張るんだよ。大丈夫、お兄さんならきっと合格だよ」 と、お婆さんはニコニコと励ましの言葉をかけてくれ、駅の構内に向かってのんびりと歩いていった。 私は試験を受けに来ていると勘違いしているお婆さんのうしろ姿に深く頭を下げ、改めて合宿教習所にかける意気込みが強くなるのを胸の内に感じた。 免許センターに到着した私は、二輪試験場入り口奥にある受付に行き、運転免許経歴書の書き方を教わった。 受付の職員は、 「運転免許経歴書ですね。それではこちらの用紙に、お名前と住所、違反による取り消し等の年月日、あと運転免許証を拝見いたします」 と、丁寧に教えてくれた。 教えられた通りに記載しながら 「あの、いつ頃受け取れるのですか?運転免許経歴書って」 と、私が不安げに尋ねると、受付の職員は微笑みながら、 「うーん、来週になるかな」 私は、てっきり今日中に受け取れるものとばかり思っていたので、 「えっ!来週ですかっ。あのう、今週土曜日から合宿で福島いくんですが…」 「大丈夫っ。教習所にちゃんと送るから。この封筒に教習所の住所書いてねっ」 と、はにかんだ。 出発は明後日に迫っていた。
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