第6章 福島県白河市

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第6章 福島県白河市

福島県白河市は、福島県と栃木県との県境に位置する閑静な城下町である。この地はかつて、戊辰戦争白河口の戦いの舞台となった。奥州街道を北上する新政府軍と会津藩、仙台を中心とする奥羽越列藩同盟との戦いでは、多くの若者の血がこの地で流された。当時のままの地名が多く使われているこの白河市は、城下町といってふさわしい街並みが今なお残されている。 東北自動車道を利用すると千葉からの所要時間はおよそ3時間。東北新幹線新白河駅前はビルやホテルが建ち並び、およそ地方都市とはかけ離れた様相を呈している。 私は、【合宿教習所は短期間で卒業できる】という観点から、つい、田舎の信号機もない畑道をひたすら教習車で走るだけだと思い込んでいた。しかし、それは大きな思い違いであることを路上教習で思い知らせられた。確かに信号だらけの大都会を走るわけではない。しかし、 『信号機のない、田舎道ばかりで路上教習をするのではない』 という事だけは、はっきりと断言できる。 入校手続きは午前10時30分から。 私は10時に南湖自動車学校に無事到着。直ぐにも受付に行き、本日入校予定の合宿教習生であることを事務員に告げた。 事務員は、 「はい。お待ちしておりました。えっと、今田さんですね。では、こちらにどうぞ」 と、てきぱきに対応し、書類関係に目を通した。 私は緊張した。これから、初めての二種免許の教習が始まると思うと、今までの教習所では感じたことのない緊張感が、私の身体を幾分硬直させた。そのせいか事務員の問いかけに対して、 「はい…」 と、喉がカラカラになったような掠れた返事をしてしまった。 事務員は、書類の束を手に取り卒業までのスケジュールや教習所内での食事の方法、合宿所での生活における順守事項を、丁寧に解りやすく説明にしてくれた。 その時に、私の宿泊する 『シュプレーム』 の場所を聞いたが、右も左もわからない白河市。 帰りの暗い道で、果たして無事シュプレームに辿り着く事がつくことができるのか… それだけが心配でならなかった。
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