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しばらくの大笑いの後、ふーっとため息をついて息を整えた愛深は、元気よくベンチから立ち上がり、くるっと軽やかにターンして男の方に向きなおった。
「とりあえず、まずは美味しいご飯を食べに行こう、ね!たかちゃん!」
たかちゃんと呼ばれた男は、愛深をちらりと見てから、ポケット灰皿にタバコを押し付け、よっこらしょっと立ち上がった。
「さてと、ディナーは何にしますか?お姫様」
男はそう言うと、右手をすっと差し出した。
「あはは。ありがとう、王子様。それじゃあ...」
.......。
.....。
...。
しばしの沈黙。
愛深は差し出された男の手を取りながら、うんうんと頭をひねっていた。
「じゃ、いつものとこでパスタね」
さらっとメニューを決めた男は、ほら行こうと愛深に声をかけ、歩き出した。
「えー、今考えてたのにぃ!」
ちょっとほっぺを膨らませた愛深は、口ではそうは言ったが、特に反対する訳でもなく、男の手を握り直した。
「お前、メニュー決められないじゃん」
あーはいはい、とほっぺを膨らます愛深を軽くあしらいながら男はちょっと笑った。
「そうだけどさ!今日は決められるかもしれないじゃん」
「はいはい、いつか決めてくださいね、お姫様」
「今日のところは、いつものところでいいわ、王子様。だってあそこのパスタ、美味しいもん!」
顔を付き合わせた2人は、ちょっと見つめあってかろ、ふふふ、と笑いあい、軽やかに公園を後にしたのだった。
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