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今日はお城で舞踏会が開かれる。
表向きは隣国と交流を深めるイベント。しかし、舞踏会には王子様の花嫁探しという裏の目的があるらしい。自国は勿論のこと、各国から綺麗に着飾った女性が集まっていた。
「ふふっ、王女の座は私のものよ。でも、あらためて見ると……お城って大きいわね。思わず見上げてしまったじゃないのよ。いけない、一般市民丸出しね。こんなことでは、王子様のハートを射抜けないわ」
「そうよ、グレコさん」
「誰!?」
「あなたの永遠のライバル、タコデレラよ」
……
……
だから、誰なの!?
目の前でドレス姿のタコが笑っている。勿論、タコの知り合いなんていない。
「グレコさん、王子様のハートを射止めるのは私。ちょっと可愛いからって調子に乗らないでよね。どれだけ綺麗に着飾っても、女神のように美しい私には敵わないのよ」
「……あなたも王子様の花嫁候補って訳ね」
「花嫁候補? 違うわ。私は王子様のハートを射止めて、日本の優秀な警察官のおじさまに『ヤツはとんでもないものを盗んで行きました。あなたの心です』って言わせたいだけよ」
……
……
放っておいて良いかしら?
「というわけで、くらいなさい!」
「きゃあ!」
タコが墨を吐き出した。
「あっ、ドレスが!?」
「これで、王子様は私のものよ。さよなら」
タコデレラは凄まじい速さでお城の中へと消えていく。
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