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「彼、子供が欲しかったみたいですね。でも、働く女性にとって、それがどれだけ大きな帰路となるかまでは、理解していないようでした」
「そうなんですよ」
結婚してすぐ、旭は子供を産みたいと思っていたが、毅はしばらく二人でいたい、と言った。
いつも「子供なんて、すぐに出来る。今じゃなくていい」とやんわりと断られ、いつの間にかセックスレスになっていた。
もしかするとその頃には、旭の収入を知っていたのかも知れない。
プライドが高い毅は、きっと旭よりも稼ぐことが目標で、自分の稼ぎだけで家族を養うことが目的だったように思う。
それが逆転することのないまま、旭は女の子玩具からシニア玩具の企画に異動し、責任が大きくなると同時に楽しさも増えていった。
子供がいない夫婦だっているじゃないか。
それで楽しく暮らしている人たちもいるのだから、子供を産むことだけに囚われなくてもいいはず、だった。
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