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「小山内、あのさ。多分真弓のことだから、話していないんだろうけど。彼女は友人じゃなくて、僕の妻だ」
「は……い?え?え?どういうこと、ですか?」
「そういうことよ」
辻は長谷川と目を合わせ、ペロッと舌を出して戯けて見せた。
長谷川も「知り合いって嘘ついてごめん」と、申し訳なさそうな顔をする。
妻だと言うとやり難いだろうと思っていたようだが、そうしたことで却ってその妻から「何か疚しいことがあるのか」と疑われていたと言う訳だ。
「え?だって、辻って」
「うん?あ、それはさ。あなたも同じでしょ?えぇと、旭ちゃん」
「……あぁ、はい。なるほど。弁護士さんも出来るんですね」
「そう。申請を出せばね、旧姓のまま仕事出来るのよ。大体、名前を変えるのが女の方が当然のようで、おかしいと思わない?」
「そうなんですよね。女が名前を変えるのが当然だって、思ってる男が多いみたいですよね。別に逆だっていいのに」
ねぇ、と共感し合う女二人を目の前にし、長谷川は苦笑いを浮かべるしかなさそうだ。
今日はお祝いよ、と彼女がもう一度乾杯を促した。
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