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「では、真弓さん。本当に色々ありがとうございました。もう阿呆みたいな夫で情けない限りです」
「確かに、本当に阿呆みたいだったものねぇ」
「こら。真弓。幾ら何でも、クライアントの旦那さんなんだから、自制しなさい」
「あら、だって。本当に酷いのよ」
「長谷川さん、いいんですよ。本当に馬鹿な夫だったんで」
「そうよ。そうよ。自分だけ浮気していたのに、慰謝料を巻き上げようとしてたんだから」
「自分だけ……まぁそうですよね。でも何で、慰謝料が取れるなんて思ったんだろう」
旭がそう言うと、彼女が「それはね」と話を切り出した。
何故、毅は慰謝料を支払わせようと画策したのか。
「どうも女の方が、色々調べたりしたらしいの。あなたたちの会社の大まかな年収とか。旭ちゃんの趣味嗜好ならば、これくらいの預貯金があるんじゃないか、とか」
「えっ。趣味嗜好って」
「あぁ、そう言うとあれだけど。ブランド物が好きかとか、そう言うことよ」
「なるほど。そんなに高いものは買ってなさそうだから、きっと持っているはずだって言う予想を立てたんですね」
「そう。だから、慰謝料取るぞって脅して、離婚することに同意させて。それから、慰謝料は譲歩してやるから、代わりにきっちり財産分与。とかって画策していたみたいよ。彼の方はそこまで預貯金なかったみたいだしね」
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