1570人が本棚に入れています
本棚に追加
旭の収入を彼女が調べた。
つまりあの大喧嘩の時には、二人の関係が出来ていたかはさておいて、妻の会社についても話をし、なんなら愚痴をこぼすような間柄ではあったということ。
ただ、あの後確かに、毅と旭は一時期セックスレスとなったが、その後「子供が欲しい」と彼は言ったのだ。
いつから始まって、どのくらい続いていたのか。
そんなこと考えなくても良いけれど、よくもまぁ浮気をしておきながら、そんなことが言えたものだ。
子供が出来なくて正解だったのかもしれない。
「旭ちゃん、きっとね」
下を向いて考え込んでいた旭に、辻は努めて優しく語りかける。
「色々振り返れば、あれ?あれ?ってことはあると思うの。これから何度も。でもね、その都度ムカついてたら、あなただけ前に進めないじゃない。くだらないから、他にいい男見つけなさい」
「そう、ですけど……」
「小山内。とにかく、今日は飲もう。俺の奢りだ」
やった、と喜んだのは旭ではなく、辻の方だった。
これから、前を向かなければいけない。
そう思いながらも、旭はまだ後ろを向いている。
最初のコメントを投稿しよう!