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「長谷川さんって、お家でも優しいですよね?きっと」
「うん、そうね。優しい、かな。裁判抱えてたりすると帰れない時もあるし、そういう時は家の掃除とか全部、彼がやってくれて。勿論、申し訳ないなぁとは思うわよ。でも、忙しい時はお互い様だよって」
「いいなぁ」
毅はただ飲み会で忙しいだけで、担当だった掃除機がけも何もかもしなくなった。
それを旭が補ったところで、お前の方が時間あるなら当然、としか言ったことがない。
「うぅん。でも、結婚した時は、彼は彼なりに葛藤があってね。旭ちゃんの元旦那と同じようなものでね。収入差にもがいて、苦しんでいたと思うの」
「あぁ、そうですよね。玩具屋と弁護士では、ね」
「男のプライドもあったんだろうけど。でも彼は、それを私にぶつけることはしなかったわ」
「えぇ。羨ましい。もう終わったことだけど、毅にもその欠片くらい、あったらよかったのに」
「そうねぇ……」
珍しく真弓が、悲しそうな表情を一瞬見せる。
旭は何も返せず、黙ってしまった。
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