4 離婚、と言う選択肢

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「この間、土曜に仕事だって言って出掛けて行ったよな?その時、俺見たんだ。この男は誰だよ。一度じゃないぞ。俺が、この男と旭が歩いているのを見たのは。三度目だ」 毅はスマホの画面をピンチアウトし、こちらへグイッと押し付けるように差し出した。 その画面に大きく映されていたのは、カフェでお茶をする旭と長谷川である。 「は?長谷川さんだけど。私の上司だけど。結婚式も来てくれた方よ。忘れた?」 「長谷川だか何川だか知らねぇけど、これは浮気だ。上司と二人でこんなデートみたいな会い方があるか」 「だから、何言ってるの。この時は、クリスマスに向けた出した新商品の売れ行き調査だって、ちゃんと言ったよね。その前に見たって言うのは、一体いつを指しているのか分からないけど。何なのよ、急に」 苛ついた顔をした毅は、もう聞く耳を持たない。 大体いつもそうなのだ。 自分の思うようにいかないことは、全て旭のせいにする。 何をどう説明したって、彼は自分に都合の悪いことは聞こえない。 結婚して五年が経ち、夢に見ていた幸せな家庭はどこに行ったのか、もう分からなくなってしまった。
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