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「では、これからのお話は、私が間に入って進めてまいります。ご主人様も代理人をお立てになりますか」
「……それは少し考えます」
消えそうな声でそう答えて、辻に聞かれるまま連絡先を伝えると、彼はそのまま席を立った。
二人で見立てたコートと、旭が一昨年あげた誕生日プレゼントのマフラーをしている。
きっとそんなことも忘れてしまったのだな、と旭は少しだけ寂しさを感じた。
何故旭から慰謝料など取れると思ったのが謎のまま、毅は旭と目を合わせずに帰って行った。
「はぁ。先生、有難うございました。これからまた、宜しくお願いします」
「かしこまりました」
辻はやはり、笑っていない。
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