8 めでたく離婚は成立です

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彼は自分の不貞行為を認め、慰謝料を支払うことに応じることになった。 不動産はなかったし、共有の家具家電など二束三文である。 各々の預貯金は、旭の主張の通り、財産分与には含まれていない。 彼も弁護士へ相談したようだが、辻の言うことは正しいと確認しただけだったようだ。 「彼は、奥様に引け目を感じていたようです」 話し合いを幾度と繰り返している時、辻が毅の様子を教えてくれたのだが、この言葉は旭には胸の奥に小さなしこりを残した。 結婚してから、毅がそう思っているのではないか、と感じることがあったからだった。 理由は簡単。 親や周りが、自分よりも妻の方を褒めるから。 ただ、それだけだ。
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