11 あいつの横顔

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「えっ。なに、なに」 「いや、ただのレシピだけど」 「あぁなんだ。ラブレターかと思って、びっくりしちゃったじゃん」 「朝からそんなものを堂々と持って来るか」 「……だな」 そして彼は、あの時と同じように柔和な表情を見せる。 そう、この顔。 この顔を旭は、何度も何度も思い出していた。 「ありがとう。メールとかで良かったのに」 「あぁ、そう思ったんだけど。料理しながら携帯とか見るのって、結構面倒じゃない?だから、さ」 「確かに、そうだね。わざわざ、ごめんね。俺がお願いしたのに」 「ううん。いいんだよ、こんなの。じゃあ、また」 「おう。また」 来月楽しみにしてるよ、と離れ際小声で言う花村に、認めたくはないが少しドキッとしてしまう。 顔は赤らんでいないだろうか。 自分の席に行くまでに、平常心に戻さなければ。 あぁでも、きっとあんな風に色んな女に囁いて来たんだろう。 まだ大きく音を刻む自分の胸に手を当てながら、顔がいいからコロッと騙される女がいても仕方がない、なんて妙に納得した。
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