-4℃の魔法

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押しつけられた彼の冷たい唇の感触と。 いつの間にグローブを脱ぎ捨てたのか、わたしの氷のような頬に、むき出しになったばかりの彼の手の温もりが伝わってくる。 長い長いキスを交わした後、お互いの口から出る吐息が絡み合うように混ざりあって、やはり余韻を残しながら消えていく。 その後をひく頼りなげで儚げな感じが、今の自分と重なって、わたしは天を仰ぎながら嗚咽した。 彼はわたしの涙を愛おしそうな手つきで拭うと、いつものゆったりとした低い声で囁いた。 「……今日の気温、マイナス4度だってさ。知ってる?冷たい場所でするキスって、永遠に記憶に残るんだって……」 彼は狡い悪魔だ。 せっかく想いを断ち切ろうとしているのに、こうしてなに食わぬ顔で、わたしの心を緩やかに縛りつけて逃がそうとしないのだから。 「だったら……わたしはあなたのこと、永遠に忘れられないってことじゃない」 わたしは十字架を背負いながら、再び出口の見えない迷宮へと引きずりこまれる。 「そうだよ。だから、したんだ……」 彼がわたしにかけた-4℃の魔法。 それはきっと、切ないほろ苦さととろけるような甘さが、残酷なくらいに丁寧に織り込まれたものだ。 ーーENDーー
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