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依頼
「どうか助けて下さい。トミーを探して欲しいの!」
朝っぱら早くから、はあはあと息を切らせながら飛び込んできた闖入者は、蚊の鳴くような声でそう言って、いやに大きな目を潤ませ、白いハンケチを握りしめて、ぷるぷると震えた。
白いレースに彩られたピンクのシフォンのドレスを身にまとい、真っ赤なサテンのリボンを付けている。どう見たってこれは、良いとこのお嬢だ。
きっと金にはなるに違いない。けれどその時ミーシャは、程良く冷めた白身魚のフライをパンに挟んだ朝食に、今まさにかぶりつこうとした所。それに水を差されて、すこぶる付きに機嫌が悪かったから、自然声が尖った。
「トミー? なんだい、そりゃ?」
「わたくしの愛しい御方。末を誓い合った殿方でございますの。それが……突然姿を消してしまって」
「はあん」
ますます興味はそそられない。
世間知らずのお嬢が男に捨てられて右往左往しているという図式以外は思いつけない。おまけにワンコじゃあないか。
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