追跡

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「それにしても、あんたがプレムを乗りこなすとは思わなかったよ。お貴族様のたしなみなら乗馬だろ」  プレムとは、白い大型の走鳥で、馬のように乗って走ることが出来る。馬力の上では馬に劣るが、滑空することは出来るし、足先を引っかけて崖を登ることも出来、小回りが利いて重宝至極な庶民の足だ。  はじめのうちこそ、四つ足の馬とは異なる揺れ方に悪戦苦闘していたクリスだが、すぐに慣れて早くもすっかり堂に入った手綱さばきは、やはり乗馬の下地があるからなのだろう。  いかにも悪目立ちするピンクのドレスから、継ぎの当たったサロペットズボンに着替え、穴の開いたキャスケットを被ったクリスは、ちょっと見には路地裏の小汚い物売りの少年か何かのように見えなくも無い。 「基本は同じですわ。わたくし、乗馬は得意でしたの」  ただし、口を開かねば、である。
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