追跡

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 この格好に着替え、セントラルパークから問題の路地裏までを再び辿ってみたが、日が昇るにつれ人通りの激しくなる一帯の痕跡は、既にほとんどかき消されてしまっていた。しかし、大勢が争った跡は確かにあって、足跡から相手は複数の人間らしいとミーシャは鑑定した。  アクムナス国内に、人間はほとんど在住していないが、首都クーケットには人間街があって、交易に従事する人間達の拠点となっている。そのほとんどは海を隔てた大陸にある人間の国、ヴァンガーノス人だ。  そこで二人は、容易ならざる事実を聞いた。  三毛の毛皮を持つ猫族の男を捜し回っている者達がいたというのである。  確かに、三毛の男はとても珍しい。  人間の中には、犬族や猫族を対等と思わず、奴隷やペットのように扱いたがる輩が存在しており、大陸ではそうした不届き者によって子どもや珍しい毛色の者が掠われるという事件も起きるらしいが、アクムナスではほとんど無い。見つかれば重罪に処せられるからだ。  だが、事情は少し違っていた。いや、もっと悪い。
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