依頼

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 ここアクムナスは、猫族(ケットシー)犬族(クーシー)とが合議によって治める島国。  過去には諍いをした歴史もあるらしいが、現在のモットーは友好かつ協調。対等な間柄で、決して仲が悪いわけではないけれど、生活様式やものの考え方などは往々にして異なる。  犬族の恋愛事情なんて知るものか。  そんなミーシャの内心の苛立ちが伝わってでもいるかのように、娘は涙を……いやむしろ、目の玉そのものをこぼれ落ちそうにさせながら、ぷるぷる、ぷるぷると震え続けている。 「そんなに震えなくたって、取って食やぁしないよ。まったく――」  なにしろ、ミーシャは猫族としてはごく標準的な体格なのだけれど、目の前で震えている犬族の娘は、それよりも一回りは小柄なのだ。珍しいと言う程じゃ無いけれど、猫族よりも小柄な犬族は多くはない。
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