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「さ、そこへお座り。とりあえず、はなっから話を聞かせてもらおうじゃないの。いや、その前に、まだあんたの名前さえ聞いてなかったね」
「これは失礼を。申し遅れましたが、わたくし、クリスティーナ・アンジェリック・ロウズ・ド・チワワと申します」
スカートをつまんで膝を屈め、恭しく挨拶をする。
うわあぁ、これはまさに、正真正銘のお嬢だと、ミーシャは頭を抱えた。
クリスティーナというのが彼女の名前で、それから母方の姓、父方の姓と続いて最後が一族の名。これは生粋のお貴族様だけに許された称号なのだ。
「ああっ、でも、あの、どうか家にはわたくしのことはっ」
つい習慣でフルネームを名乗ってしまった事に思い至ったらしいクリスティーナは、わたわたと慌てたが、
「心配しなくても、あたしは依頼人との信頼関係第一をモットーにしているんだよ」
面倒くさそうに手を振ったミーシャが、いいから座んなと爪で指し示すと、ようやく勧められた椅子に腰を下ろした。そんな仕草のいちいちが優雅だ。
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