第壱章   蛙人間《ヘケト》

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「いいよ、率直な意見をどうも。…そういやあんた最近ここらで密売されてるドリンク剤知ってる?」 まるで何もなかったかのようにボスの顔を上から眺めるファッジ 「なんだ急に」 「ヘケトエナジーってやつ。蛙人間(ヘケト)エキス配合らしい。知らない?」 ボスの顔色が変わる。 「半人半獣の効能を(うた)った商品販売は禁止されてるんだがな。…もし本物なら連合軍も黙ってないだろうから国際獣犯法違反で処罰されるかもしれない。販売元は知らなかったじゃ済まされないだろうな」 ボスが大量の汗を掻く。 「この小さな村であんたがどうやって私腹を肥やしてきたのか気になってね。表の顔は不動産業と卸業。裏の顔は違法な滋養強壮剤(じようきょうそうざい)の製造販売…叩けばもっと(ほこり)が出そうだな」 「あ、あれは!中身は普通のドリンク剤だ!蛙人間(ヘケト)の成分なんてこれっぽっちも入ってねぇよ!」 「なら詐欺罪にあたるか」 ファッジがニヒルな笑みを浮かべた。 「…俺を脅す気か?」 「あんたが汚い金をどぉ稼ごうが知ったこっちゃない。私達は任務を迅速にこなせればそれでいい。この件は大人しく引け」 そう言うとなみなみと()がれたブランデーを一気に飲み干した。 「っく…大したクソガキだぜ」 ボスがオジサンに(あご)でくいっと指示を出す 「ご馳走さま。これはいい酒だ」 冷たく微笑むとグラスをトレイに戻した。 「…それ50度はあるぜ隊長さんよ。情報以外に必要なものは?」 「ない。邪魔したな」 そういうとファッジは隊員を引き連れ颯爽(さっそう)と部屋を出て行った。 ふぅ~っと脂汗を拭いながら溜息を吐くボスに 「してやられちゃったね」 とセクシー美女がくすくす笑った。
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