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【峻険の森】
夜とは打って変わって美しい峻険の森
川はせせらぎ
鳥はさえずる
緑の葉が生い茂り
色とりどりの実をつける
昨夜訪れた洞穴の前に佇むファッジ
足元の黒いシミをみつめている
不首尾者のあった場所には黒く変色した跡が残っていた
そこへ
ペタペタと湿気を含む規則的な音が近付く
「遅くなって悪かったな蛙人間」
洞穴に向かって詫びると昨日襲いかかって来た蛙人間が両手をだらんとして洞穴の入り口に立っている
〈…遅すぎたなファッジ…〉
「何があった」
〈…血を抜かれた…〉
「血を?誰に」
〈…わからない。小さな非生命体〉
「非生命体?」
〈…この森も終わりだ…堕ちるところまで堕ちた…〉
「待て、結論を急くな。他の蛙人間に被害は?」
〈…血を抜かれただけだ〉
「誰も死んでないんだな」
〈…死んでいない〉
少しだけ安堵するファッジだが、では何故森に訪れた人々を襲うのか疑問が残った。
「昨夜人を襲ったのは何故だ」
〈…この森には人ならざるものがいる…一見…人と見分けがつかない〉
「人ならざるモノ?」
何か妙な気配を感じ、ハッとあたりを見回すファッジ。
「なにか来る」
ガサガサっと草を掻き分ける音がする。
〈…元凶はあいつらだ…神への冒涜だ…〉
ファッジの後ろに隠れ、怯える蛙人間
本当は臆病で大人しい本来の姿に戻っていた
「大丈夫だ、私がいる」
腰の隠しホルダーから携帯クナイを取り、カシャンと刃先を光らせる。
洞窟を背に木々の生い茂る隙間を食い入るように注視した。
ガサガサ…
ガサガサ…
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