第壱章   蛙人間《ヘケト》

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その時! 緑の(かたまり)が回転しながらファッジ目掛け飛んで来る。 すかさず両腕でガードする。びゅんというスイング音と共に、長い足が鳩尾(みぞおち)部分を直撃。膝でガードしたものの、ずんっと重くのしかかり顔を(しか)めるファッジ。 だがすかさず相手の内ひざにローキックを放ちバランスを崩させる。中段蹴り・中段回し蹴り・ハイキックのコンボで反撃。一旦相手と距離を取る。 ファッジは凝視した。相手は蛙人間(ヘケト)のような緑の表皮に手脚が妙に長い、人によく似た男性だった。 「待て、敵ではない」 言い終わる前に長い腕が風を切る。顔面目掛け緑の拳が飛んでくる。下に避け(すんで)(かわ)す。クナイを持っていない左手で(あご)をカウンターパンチ、右わき腹に膝で一撃(くら)わすも動じない。 打撃に手応えがない…まるで吸収されている…ファッジは思った。 その間も長い手足がびゅんびゅんとファッジを狙う。 仕方なくクナイで反撃しようとしたその時 「?!」 蛙人間(ヘケト)がクナイを握るファッジの右手を掴み邪魔をする その隙にファッジは背後を取られてしまう 「ぐっ…」 ヘッドロックをかけられそのまま首を絞められる。 首にギリギリと圧がかかる。 意識が遠のくファッジはヘッドロックから逃のがれるべく態勢を立て直そうとする。 いつもなら円転滑脱(えんてんかつだつ)にこなせるはずが、なぜか(のが)れられない。 並みの人間の力ではない。それもある。 が、それ以前に蛙人間(ヘケト)が尚もファッジの手を掴んで離さない。 「…離せ」 それでも手を離さない蛙人間(ヘケト)はあろうことか自らの(てのひら)にクナイを突きたて、瞬時にクナイを引き抜くと血が出るよりも早くファッジの首を締める後ろの(やから)の顔を手で覆ったのである。
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