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4.ゆうじの好きなもの
「え!?一部屋空いた!?」
「そう、急にキャンセルが出たから。だから一部屋サービスしてやるよ。お前ら三組カップルなんだろ?」
旅館の主人である染井くんのおじさんが、親指を立てて言った。
……という事で当初男女別の部屋の予定が、三組で分かれる事に。
「ゆうくーん」
嬉しそうな声がして、ひなきが部屋に入ってくる。
「どうしたんだ、それ」
ひなきは落ち着いた紺色に小さな花柄の浴衣を身に纏っていた。
「借りてきちゃった♪今日近くで花火大会があるんだよ」
「へえ。ひなき、浴衣着れるの?」
「うん♪ここの女将さんに教わって、毎年着てる」
アップにした髪。
少し空いた背中の部分から覗くうなじ……うん、俺は水着よりもこっちの方がいいな。
「おいで」
手を伸ばすと、頬を染めて小走りで駆け寄ってくる。
そして何もないところで蹴躓いて……こけた。
俺の腕の中に飛び込むような形で抱きとめる。
「……本当、危なっかしいな……」
「ごめんね……」
至近距離で見上げてくる様子が可愛くて、胸を締め付けられるような感覚に陥る。
こんなの……他の誰にも味わった事がない。
腕の中に閉じ込めるように力を込める。
「ん……苦し……」
「ごめん」
力を抜いて体を離すと、少し乱れた浴衣の胸元から白い肌が覗く。
「…下着着けてない?」
「うん…その方がいいって……ぁっ……」
思わずその輪郭を指でなぞると、体をビクッと震わせて小さく声を上げた。
……それだけで背中がゾクゾクと震えるような恍惚感に満たされる。
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