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「でも、お前にだけは言ってもいいだろう。おばあちゃんは、どうしても行かなくてはならないと思ったんだよ。そう決めたから、そういう運命になったんだ。おばあちゃんは、この家の守り神になる。もう、誰にも譲りたくないくらい、お前たちを愛おしく思ってしまった。私がこの手で、お前たちを守りたいと思ってしまった。でも、おばあちゃんがこうして死んでいくことができるのは、ねぇ、間違えてはいけないよ。おばあちゃんが死んでいくことができるのは、それだけちゃあんと、生きてきたからだ。死んでいいだけの人生を、歩いてきたからだ。だから、ほめておくれ」
私は、出せるかぎりの大きな声を出しました。
「おばあちゃん、すごい。おばあちゃん、すごい。おばあちゃん、すごい」
おばあちゃんがうれしそうにするので、もっともっと声を張り上げました。
「おばあちゃん、すごい。おばあちゃん、すごい。おばあちゃん、すごい」
息がきれたとき、おばあちゃんは、ちいさく目をつむりました。しわしわのまぶたが、朱色のひかりを受けてきらきらとしていました。
「ああ、うれしい。歳をとると、もう誰もほめてくれなくなるんだから」
最後の一滴まで呑みこんだ私は、おばあちゃんにならって目をつむりました。
ああ、よかった。
ちゃんと、まるごとぜんぶ、呑みこむことができた。
そう、深く安堵しながら。
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