どこまでもつづく一日

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 ふたたび目をひらいたとき、おばあちゃんの体はもう、つやつやとはしていませんでした。脱衣所でまるまった服のようにくたびれて、まだほんの少し温みが残っていそうな、そんな体でした。私はベランダに出ました。明るい夜の中で、室外機から、もうもうと熱い風が出ていました。その熱を体中にあびながら、私は空を見上げました。  ひとつぶだけ、涙が出ました。  こんなにも愛されていること。こんなにも愛していること。こんなにも守られていること。こんなにも守りたいと思えること。  たくさんのかなしい気持ちでいる人を思って、私は涙を流しました。  ごめんなさい、とつぶやいて、そのひとつぶの涙をぬぐったときの覚悟を、今も私は忘れることができません。  ぴかぴかとひかり、時折胸をきつく痛ませるその覚悟が、私の業となりました。  
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