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あれからもう、三十年たった。あの後奇跡的に助かった僕らは必死で逃げた。
たぶんもう死んだと思われているはずだけど、もしもまだ追われていたら、と思うと怖くて怖くて仕方がなくて、できるだけ遠くへ逃げたくて必死で走った。
走って、走って、走って。体力も尽きて、もうどうしようもなくなった時、僕らは親切な老夫婦に助けられた。
ボロボロになりながら走ってきた僕らに何も聞くことなく、老夫婦は親切にしてくれた。温かい食事と寝床。それだけで僕らは涙が出るほど安心できた。
それからも老夫婦は何も聞くことなく僕らを泊めてくれた。
そのお礼のために僕らは老夫婦の仕事を手伝った。老夫婦は麓の村で神聖とされている山に住み、薬草を採る仕事をしていた。
一般人は立ち入ることすら出来ないその山に、どうして彼らは住むことが出来たのかは今でもわからないままだ。
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