エピローグ

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仕事は、あまり捗らなかった。 このモードになったら、集中力がなくなってしまう。 慶と出会う前の私は、人と関わることを極端に避けていて。友達なんて要らないし、増してや彼氏なんて一生出来ないと思っていたのに。 気がつけば慶のことを考えていて、独りの部屋に帰ると寂しさが込み上げてしまう。 自分で「こうする」って決めたのに。 慶だって夢のために頑張ってるんだから、応援しなくちゃいけないのに。 「会いたいから、今すぐ来て」って言いたい。いつも喉のそこまで言葉が来ていて、今にも出そうになっていた。 そんな事、言える距離じゃないのに。 仕事は順調だし、友達もたくさん出来た。でも「楽しい」って思えば思うほど、「何か足りない」という想いが膨らんでいった。 夜。 仕事を終えて、帰路に着いた。 今日の夕食は何にしよう? そう言えば、鶏もも肉があった気がする。 そうだ、唐揚げにしよう。 ーーー唐揚げ、慶が好きだったなあ。 いつも、テーブルの向かい側で、子どもみたいに口いっぱいに入れて頬張って。「美味しい!」って、目尻に皺を寄せて褒めてくれたっけ。 ああ、慶に会いたい。 油断したら、涙が溢れそうだった。 慌てて、空を仰ぐ。と、 ーーー凛! 聞き馴染みのある、甘くて優しい声。 まさか、と思って振り返ると、そこに彼が立っていた。
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