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「…慶…?」
ニコ、と微笑う彼。目尻の皺。黒のスーツに身を包んだ、スラリとした長身。紛れもなく、西澤 慶一郎がそこに居た。
「なんで、居るの…?」
「凛が寂しそうだったから?」
「う、嘘でしょ!?」
声を立てて笑われた。
「ごめん、流石に嘘。前もってチケット取ってた、」
「だよね?て言うか、来るなら言ってよ!」
「ごめんごめん、驚かせたかったから」
「あ、悪趣味…!」
「驚いた?」
「驚いたよ!」
「なら、作戦成功だな」
嬉しいを通り越してパニックだった。朝電話してた相手が、まさか目の前に居るなんて。あの後、すぐに家を出て飛行機に乗ったことになる。
「それにしても…何でスーツ?」
素朴な疑問だった。飛行機の中で、さぞかし身動きが取りにくかっただろうに。
首を傾げると、彼は意味ありげにニヤリと微笑った。
「そりゃあ…」
ーーー 一世一代のプロポーズだから、かな。
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