エピローグ

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「へっ、」 素っ頓狂な声が出た。言ってる意味が分からない。 だけど彼は御構い無しに話を続けた。 「6年も待たせてごめん。だけどやっと、凛を嫁にもらう準備が出来たから」 少し、距離を詰められて。両手をそっと握られた。 「仕事とか、今の生活のこともあるだろうから、すぐに帰って来い、なんて強引な事は言わないけどさ」 ーーー俺の側に居て欲しい。 「一生かけて、大事にするから」 視界が濡れて、何も見えなくなった。 いつかそうなるんだ、とは思ってたけど。今か今かと待ち望んだその時が、どうやら今日やって来たらしい。 「嬉しい…、ずっと、寂しかったの、」 「うん、俺も寂しかった」 「会いたかった、慶…」 「俺も、会いたかったよ」 腕を引かれて、広くて暖かい胸に包まれた。 慶の、匂いがする。 「凛のタイミングで、帰って来て。待ってる、」 「うん…すぐ帰る、」 「…嬉しいけど、職場の人に迷惑かけない程度にしろよ?」 見上げると、目が合って。 そんなツッコミも久しぶりだったから、思わず笑ってしまった。 「…なあ、凛、」 「はい、」 「キスしていい?」 「えっ、ここで…!?」 「うん、」 「ダメだよ、見られてるし…」 「ここはアメリカ、自由の国だろ?開放的になろうぜ、」 「なにそ…、」 何それ、って言い切るより前に、唇が触れていた。すぐに離れて、ニッと微笑われる。 「凛、」 ーーー愛してる。 今までの私なら、絶対にこんなことしなかったけど。この土地に長く住んだからなのか、それとも、この人と出逢ったからなのか。 無性に、触れたくなってしまって。 らしくもなく、目の前の端正な唇に、自分の唇を寄せた。 【おわり】
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