波乱③

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2人で帰っていると、校門に、彼の友人が立っていた。私達を見つけて、気まずそうな顔をしている。 慶はどうするかなと思って様子を伺ったけど、見向きもせずに校門をすり抜けて行く。私も慌てて後を追った。 「待てよ、慶!」 後ろから呼んでいる。でも慶は立ち止まらない。 すると私達の前に、ケインくんが立ちはだかった。 「待てって言ってるだろ…!」 慶は怒鳴った。 「どのツラさげて言ってんだよ!昨日の今日で許すとでも思ってんのか?」 すると突然、ケインくんが頭を下げた。綺麗な90度…いや、それ以上かもしれない。 「悪かった!本当に反省してる!悪かった!」 ちょうど、英文科の子達が帰る時刻。ちらほらと出てきた女子学生が、こちらを見ている。 「や、やめて、目立ってるから…!」 周りの目線は気にならないタイプだったけど、こういう恥ずかしいのは勘弁して欲しい。 私がお願いすると、ケインくんは顔を上げて、眉毛を垂れながら言った。 「羨ましかったんだよ、俺。…慶は絶対彼女は作らないって言ってたのに、突然作ったから不思議で。どんな子かと思ったら、めちゃくちゃ良い子で、お互い大事にしてて。本気で邪魔してやろうとか思ってた訳じゃ無いんだ、本当に…!」 慶が、チラリと私を見た。 どうする?って訊きたいんだろうなと思った。 「…私は、ケインくんの事、許せないよ。怖かったし、最低だと思った。だけど、2人がいつまでも喧嘩してるのは嫌…かな、」 すると慶は「矛盾してない?」と呟いた。そして頭を掻く。悩んだみたいだったけど、彼は結局ケインくんを許した。 「…うちに泊まりに来る前には絶対連絡しろ。あと、来て良いのは1限の前の日だけな」 ばつが悪そうにそれだけ言うと、私の手を引いて歩き出す彼。 後ろから、ケインくんの「ありがとォ~!」という雄叫びが聞こえていた。
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