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「一人暮らしだと思ってたら、同棲だったんだな!ならそう言えよ、水臭えなあ!」
健司のボリュームは、いつも狂っている。至近距離なのに、異常に声が大きい。
「コイツさ、俺にも付き合ってるの隠してたんだぜ?毎日弁当食ってるから、義母が作ってくれてるのかと思ってたよ!」
「お母さんはお弁当なんて作れないよ。家事は全部私の担当」
「へえー、すげえな!尊敬する!」
凛がにこやかに応対するから、俺は終始イライラしていた。本来であれば、2人であんな事やこんな事をしていたはずなのに。計画が台無しだ。
しかも、彼女が俺以外の男と話しているのなんて、ほぼ目にしない光景で。これが巷に聞くジェラシーか、と納得する。
「中原くんは何学部なの?」
「俺は教育学部!てか中原くんじゃなくてケインで良いよ!」
「ケイン?」
「健司だから、ケイン!な、慶?」
「…俺は呼んでねえけどな」
「じゃあケインって呼ぶね、私も凛で良いよ」なんて彼女が微笑うから、またイライラが募る。
「凛ちゃんは何学部?」
「私は文学部」
「ああ、ぽいぽい!」
「…何それ、暗いってこと?」
「違うよ!いや、イメージは暗かったんだけど、話してみたら全然話しやすくてビックリした!高校の時に知っておきたかったよ!」
天然の健司がそうやって褒めると、彼女は赤面した。多分トキメいた、とか言う訳じゃなくて、嬉しいって意味の顔だとは分かったけど。俺のイライラはどんどん高まっていった。
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