新生活①

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「一人暮らしだと思ってたら、同棲だったんだな!ならそう言えよ、水臭えなあ!」 健司のボリュームは、いつも狂っている。至近距離なのに、異常に声が大きい。 「コイツさ、俺にも付き合ってるの隠してたんだぜ?毎日弁当食ってるから、義母が作ってくれてるのかと思ってたよ!」 「お母さんはお弁当なんて作れないよ。家事は全部私の担当」 「へえー、すげえな!尊敬する!」 凛がにこやかに応対するから、俺は終始イライラしていた。本来であれば、2人であんな事やこんな事をしていたはずなのに。計画が台無しだ。 しかも、彼女が俺以外の男と話しているのなんて、ほぼ目にしない光景で。これが巷に聞くジェラシーか、と納得する。 「中原くんは何学部なの?」 「俺は教育学部!てか中原くんじゃなくてケインで良いよ!」 「ケイン?」 「健司だから、ケイン!な、慶?」 「…俺は呼んでねえけどな」 「じゃあケインって呼ぶね、私も凛で良いよ」なんて彼女が微笑うから、またイライラが募る。 「凛ちゃんは何学部?」 「私は文学部」 「ああ、ぽいぽい!」 「…何それ、暗いってこと?」 「違うよ!いや、イメージは暗かったんだけど、話してみたら全然話しやすくてビックリした!高校の時に知っておきたかったよ!」 天然の健司がそうやって褒めると、彼女は赤面した。多分トキメいた、とか言う訳じゃなくて、嬉しいって意味の顔だとは分かったけど。俺のイライラはどんどん高まっていった。
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