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空港に着くと、保安検査場の前まで、瑠璃とケインくんが来てくれていた。
「え、ウソ、どうしたの?」
「慶が知らせてくれたんだ!」
「留学決まったなら言ってよね、」
もうその時点で、我慢していた涙は溢れてしまった。
悩んで決めた事だったけど、やっぱり寂しい。以前の私だったら、独りで過ごすなんて平気だったけど。今は、彼らが居ないと寂しくて仕方ない。
「泣かないでよ、貰い泣きするじゃん…!」
「俺も、俺も!」
「何でアンタが泣くのよ!」
2人のコントみたいなやり取りを見て、少し元気が出た。
「頑張ってね、凛子ちゃん」
「何か困ったら、すぐ連絡してね!」
みんなが口々にお別れをしてくれる中、慶だけは輪から少し外れて黙っていた。見兼ねたケインくんが、「お前も何か言えよ!」と彼を押す。
私の前に立った慶は、何故かばつが悪そうな顔をしていた。
「あの、慶、」
「ん?」
「朝、言いそびれたんだけど、」
ーーー誕生日、おめでとう。
「…おう、全然それどころじゃないけど」
そう言って、苦笑されたけど。私は手荷物のトートバッグの中から、小さな包みを取り出した。
「あのね、何も要らないって言われたんだけど、良かったら」
差し出すと、驚いたような顔で見られた。
「大したものじゃないんだけど、アルバム。お盆の旅行とか、学校で撮ったやつとか、現像したの」
「…ありがとう、」
受け取った彼は、照れた様子で頭を掻き、「じゃあ俺も」なんて呟いた。
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