帰国①

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家に帰って、俺は彼女が風呂に入るのを楽しみにしていた。別にいやらしい意味ではなくて。風呂に入れば化粧を落とすし、部屋着になる訳だから。香水の匂いも、きっと大好きな石鹸の香りに変わる。 いつもは俺が先に風呂に入るのに、「今日は凛から入れよ、疲れてるだろ!」なんてそそくさと風呂に促した。 で、今彼女は風呂から上がってきた訳だけど。俺は落胆していた。 隣に座った彼女からは、変わらず香水の匂いがした。ほんのり塗られたファンデーション、さっきよりは薄いけどしっかりと化粧をしている。部屋着は、いつもみたいなパステルカラーのパジャマじゃなくて、いかにも海外製だなって思うようなドギツいピンクのセットアップだった。肩口から、黒の下着の紐がチラリと見えている。 普段ならきっとその下着の紐や、ショートパンツから覗く太腿を見るだけでテンションが上がるんだろうけど、全然その気にならなかった。そんなの凛じゃない。 「…どうかした?」 あまりにもジロジロ見過ぎていて、そんな事を尋ねられた。 「…いや、何でもない…風呂、入ってくるわ。先に寝てていいから。疲れてるだろ?」 そう言って微笑ったら、酷く傷付いたような顔をされた。 そんな顔するなよ。俺だってどうしたら良いかわかんねーよ。 泣きそうな彼女をリビングに残して、俺は風呂に入った。上がってくると、彼女はもう寝室に戻っていて。俺は心底ホッとした。
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