帰国②

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帰国したら、すぐ家に帰って2人で過ごすんだと思ってた。だって昨日、メールでそんな話をした。「早く会いたいね」とか「大好き」とか、人に見せるのが恥ずかしいような内容ばかりやり取りしていたのに。 それが嘘だったみたいに、食事中も彼は一言も話さなかったし、一度も目が合わなかった。 お母さんと総二さんは、「本当に綺麗になった!」とベタ褒めで、心の中でウィルにお礼を言った。 だけど、慶に「綺麗になったね」とか「可愛い」って言ってもらいたくて頑張ったのにな、と胸が痛むのも事実で。 久しぶりだから緊張してるのかなとか、家に帰ったら大丈夫だとか言い聞かせて、気持ちを落ち着かせた。 いざ家に帰ると、彼はしつこいほどお風呂を勧めて来て、気は進まないけど先に入らせてもらう事にした。 洗面台の前に立って、化粧を落とす。と、素顔の自分が現れた。 睫毛、慶の方が長いなあ。 瑠璃はもっと目が大きいのに、何で私の目はこんなに小さいんだろう。 青白くて血色が悪いなあ。 化粧を覚えてから、素顔の自分が醜く見えた。 慶に可愛いって言われたい。求められたい。 お風呂から上がったら、向こうの大学のみんなに送別で貰った部屋着を着て、薄っすらメイクをして香水を振った。 リビングに戻ると、彼は私をジロジロと眺めて。 やっと褒めてくれるのかと思って「どうかした?」と尋ねた。 「…いや、何でもない…風呂、入ってくるわ。先に寝てていいから。疲れてるだろ?」 突き放すような台詞。てっきり、今夜は一緒に寝ようって言ってくれるんだと思ってた。 彼がお風呂に消えたのと同時に、私は自室に入った。2年ぶりの自分の部屋。掃除をしてくれていたのか、埃1つ落ちていなかった。飛び込んだベッドからは柔軟剤の香りがして、わざわざ洗ってくれたんだなと、彼の気遣いが身に染みた。 慶に可愛いって言われたいだけなんだけどな… さっきしたばかりの化粧を落としたら、また醜い自分が現れた。その顔を枕で押し潰して、その日は眠った。
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