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「もう満足だろ!お前、そろそろ帰れ!」
健司を小突く。だが本人は子犬のような目をして訴えた。
「でももう終電がねえんだよー!」
時計に目をやると、もう0時を回っていた。コイツ、20時過ぎに来たくせに、一体何時間居座ってるんだ…!
「タクシーで帰れ。もしくは歩き」
「はあ?どんだけ距離あると思ってんだよ!」
言い合いをしていると、凛が口を挟んだ。
「ケインくんは実家?」
もうすっかりケインと呼んでいる。
「俺、実家!遠いと思わねえ?」
「そりゃあ遠いよね。ね、慶」
呼びかけられて、嫌な予感がした。
ーーー泊めてあげたら?
予感は的中した。
邪魔者は「凛ちゃんありがとう!心が広い!」なんて浮かれた声を出している。
「今から帰ったら遅くなるし、タクシー代もバカにならないし。ね、良いでしょ?」
愛する彼女にキラキラと良心の塊みたいな瞳で見つめられて、放り出す事も出来ず。
「…今日だけだからな!」
半ばヤケクソになって、宿泊を許可した。
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