新生活①

6/6
2593人が本棚に入れています
本棚に追加
/155ページ
「もう満足だろ!お前、そろそろ帰れ!」 健司を小突く。だが本人は子犬のような目をして訴えた。 「でももう終電がねえんだよー!」 時計に目をやると、もう0時を回っていた。コイツ、20時過ぎに来たくせに、一体何時間居座ってるんだ…! 「タクシーで帰れ。もしくは歩き」 「はあ?どんだけ距離あると思ってんだよ!」 言い合いをしていると、凛が口を挟んだ。 「ケインくんは実家?」 もうすっかりケインと呼んでいる。 「俺、実家!遠いと思わねえ?」 「そりゃあ遠いよね。ね、慶」 呼びかけられて、嫌な予感がした。 ーーー泊めてあげたら? 予感は的中した。 邪魔者は「凛ちゃんありがとう!心が広い!」なんて浮かれた声を出している。 「今から帰ったら遅くなるし、タクシー代もバカにならないし。ね、良いでしょ?」 愛する彼女にキラキラと良心の塊みたいな瞳で見つめられて、放り出す事も出来ず。 「…今日だけだからな!」 半ばヤケクソになって、宿泊を許可した。
/155ページ

最初のコメントを投稿しよう!