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玄関ドアを開けた瑠璃は部屋着で、ケインくんなんてハーフパンツしか身につけて居なかった。明らかにお邪魔してしまった感が漂っている。
「…ごめんなさい、やっぱり帰ります、」
その一言で察したのか、瑠璃は「良いのよ、いつかの仕返しってことで!」と笑った。
私がこんな時間に来るなんて、原因は1つしかない。私をクッションの上に座らせた瑠璃は、紅茶を座卓に並べてベッドに座った。その横には、上着を羽織ったケインくんも座っている。頼むからファスナーを閉めて欲しい、と思った。
「慶くんと喧嘩でしょ?今度は何?」
チラリ、とケインくんを盗み見る。彼は慶の親友。ここで赤裸々に話しても良いものか。
「あ、コイツ?空気は読めないけど、口は堅いから!大丈夫!」
どうせいつもの痴話喧嘩だと思ったのか、明るい調子の彼女。だけど話しているうちに、その表情はどんどん険しくなった。
「…え、それ、凛子がその仕事を引き受けたら別れる、って事だよね…?」
「…たぶん、」
「ちっさ!慶くん、意外と小さい男だね!見損なった!」
だけどケインくんは、見たことも無いような真剣な表情で「そうかな」と呟いた。すかさず瑠璃が、口を出すなと言わんばかりに「あ?」と低い声を出す。途端に彼は小さくなってしまった。
「瑠璃、ケインくんの意見も聞きたい」
そう言うと、彼女は嫌そうな顔をする。その様子を横目で伺いながら、ケインくんが口を開いた。
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