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全部説明したら、慶が深い深い溜め息を吐いた。ハァー、って、わざわざ立ち止まって。
「なら、初めからそう説明しろよ!言葉足らずなんだよ、凛は!」
頬を両手でつねられる。そのまま横に引き伸ばされた。
「留学の時も、そんなこと一言も言わなかったろ!作業的な事だけ言ってさ、ちゃんと凛の気持ちが聞きたいんだっつの!」
「痛、イテテテ、」
抵抗すると、やっと頬を離してくれた。両頬をさすっていると、彼は搾り出すみたいに呟いた
「…俺ばっか好きなんだと思ったよ…、」
安堵した、笑顔。心配をかけてしまったことを、本当に申し訳なく思った。
「…ごめんなさい、」
「…許さない、」
「えっ!」
「このあと一緒に風呂入ってくれたら許してやるよ、」
ガシ、と肩を抱き寄せられて。ちょうど目の前に来ていた私たちのマンションに連れ込まれた。
「それはダメ!絶対!」
必死で訴えたら、「冗談だよ」って微笑われた。
次の日、私は教授に電話して、先方との顔合わせをお願いした。
【つづく】
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